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東京高等裁判所 昭和51年(ネ)164号 判決

控訴人(第一審原告) 真田清治

〈ほか二名〉

右三名訴訟代理人弁護士 関根栄郷

同 宇都宮正治

同 片桐晴行

同 本間通義

被控訴人(第一審被告) 真田きく江

右訴訟代理人弁護士 竹下甫

同 小山稔

主文

一  原判決を取り消す。

二  甲府地方法務局所属公証人重森谷五郎作成昭和四八年第四九四号同年一二月三日付遺言公正証書による訴外亡真田精志の遺言は無効であることを確認する。

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人らは、主文と同旨の判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠の関係は、控訴人らが当審証人角田清治の証言を援用したことを付け加えるほか、原判決事実欄の記載と同一であるからこれを引用する。

理由

一  原判決の事実欄記載の請求原因(一)及び(二)の事実は、当事者間に争いがない。そして、本件遺言公正証書作成の経過は、原判決の九枚目裏八行目から一〇枚目表三行目までに挙示の証拠により、原判決一二枚目表二行目の「即ち」から同一四枚目表二行目までの説示のとおりであったことが認められ、この認定を左右すべき証拠はない。しかして、右認定したところによれば、本件公正証書による遺言の立会証人入間川悦郎は、遺言者である亡真田精志が遺言の趣旨を公証人に口授する際に立会っていなかったものである。同証人は、公証人が筆記した内容を亡精志等に読み聞かせた際には立会っているが、そのときは亡精志はただうなづくのみで、口授すなわち言語を発することによってする遺言内容の伝達をしていないから、入間川証人は、遺言者の真意を十分に把握確認することができなかったわけで、証人立会の実を上げていないことになる。従って、本件遺言公正証書の作成手続は、民法九六九条に定める方式に違背し無効であるといわねばならない。

二  よって、控訴人らの本訴請求は理由があり、これを認容すべきであって、右と結論を異にする原判決を取り消すべきである。

訴訟の総費用の負担につき、民事訴訟法九六条及び八九条を適用する。

(裁判長裁判官 松永信和 裁判官 糟谷忠男 浅生重機)

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